分野別対策2026年度試験対応
賃貸住宅管理業法の対策|条文の並びで覚える登録制度とサブリース規制
賃貸住宅管理業法は、似た制度・似た書面・似た数字が並ぶため、単語だけを覚えると必ず混同します。混同を防ぐ方法は一つで、条文の並び順に沿って読むことです。この法律は登録制度、業務の義務、監督、サブリース規制という順に整えられており、その順に追えば似た制度が隣り合う場所が見えてきます。
- 公開日
- 2026年8月1日
- 更新日
- 2026年8月1日
- 読了目安
- 約20分
この法律は3条から27条までが賃貸住宅管理業の登録制度、28条から36条までが特定転貸事業者への規制という二層構造です。まず当事者の並びで管理受託契約と特定賃貸借契約を切り分け、次に「誰が・誰に・いつ・何を・違反するとどうなるか」を条文ごとに固定します。数字は起算点とセットで覚えてください。
迷いやすい判断を、具体的な行動に変えます
- 登録制度とサブリース規制を、条文の並びで切り分ける方法
- 200戸・5年・30日・1年・3年・5年という数値の、それぞれの根拠条文
- 締結前書面と締結時書面を、時期・相手方・記載事項・罰則で見分ける
- 誇大広告等の禁止と不当な勧誘等の禁止の、規制対象と場面の違い
- 国土交通省の立入検査で指導が多い条文が、そのまま学習の弱点になる理由
01結論:条文の並びで覚える。配点は公表されていない
賃貸不動産経営管理士試験の出題範囲は、試験実施要領が定める6項目です。そのうち法に関する事項が独立して置かれ、管理受託契約に関する事項も別項目として立っています。賃貸住宅管理業法が試験の骨格に置かれていることは、項目の並びから読み取れます。
ただし、この分野に何問割り当てられるかは公表されていません。予備校が独自に集計した内訳を見かけることがありますが、実施機関が示した数字ではないため、この記事では使いません。配点を根拠に力の入れ方を決めることはできない、という前提から始めます。
代わりに使える基準が2つあります。1つは令和7年度の合格基準点で、50問中38問、必要正答率76.0%です。落とせるのは12問だけなので、覚えた分だけ得点になる分野は確実に取りたい。もう1つは、この分野の知識の性質です。登録の要件、書面の交付時期、報告の頻度といった規律は、条件が決まれば結論も決まります。
そこで方法は一つに定まります。条文の並び順に沿って読み、似た制度が隣り合う場所を先に潰すことです。この記事は法律の構造から始めて、数値の根拠条文、書面の対比、監督と罰則までを順に並べます。
02二層構造で捉える。3条〜27条と28条〜36条
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律は、大きく二つの層でできています。第2章にあたる3条から27条までが賃貸住宅管理業の登録制度、第3章にあたる28条から36条までが特定賃貸借契約の適正化のための措置です。この二つは適用される場面が違うため、最初に切り分けておくと以後の学習が整理されます。
切り分けの鍵は当事者の並びです。登録制度の側では、賃貸人が管理業者に管理を委託する場面が問われます。サブリース規制の側では、事業者が賃貸人から住宅を借り上げて第三者へ転貸する場面が問われます。問題文の冒頭で「誰が誰から何を受けているか」を確認する癖をつけてください。
もう一つ重要な違いがあります。登録制度は、管理する賃貸住宅の戸数が200戸未満なら登録の義務がありません。これに対してサブリース規制は、登録の有無や事業規模を問わず、特定賃貸借契約を結ぶ事業者すべてに及びます。この非対称は繰り返し問われるところです。
| 区分 | 条文の範囲 | 登場する契約 | 規制される者 | 適用の入口 |
|---|---|---|---|---|
| 登録制度 | 3条〜27条 | 管理受託契約 | 賃貸住宅管理業者 | 管理戸数200戸以上で登録義務(施行規則3条) |
| サブリース規制 | 28条〜36条 | 特定賃貸借契約(マスターリース契約) | 特定転貸事業者および勧誘者 | 登録の有無・規模を問わず適用される |
03定義から始める。何が賃貸住宅管理業にあたるか
2条の定義を飛ばすと、後の条文の適用範囲が曖昧になります。賃貸住宅管理業とは、賃貸住宅の賃貸人から委託を受けて管理業務を行う事業です。管理業務は2つあり、1つは賃貸住宅の維持保全を行う業務、もう1つは家賃・敷金・共益費その他の金銭の管理を行う業務です。
ここに落とし穴があります。金銭の管理を行う業務は、維持保全を行う業務と併せて行うものに限られます。つまり、家賃の集金だけを受託していて維持保全を伴わない場合、その事業は賃貸住宅管理業にあたりません。この条件は選択肢で問われます。
維持保全の意味も条文が定めています。住宅の居室およびその他の部分について、点検、清掃その他の維持を行い、必要な修繕を行うことです。賃貸人のために維持保全に係る契約の締結の媒介、取次ぎ、代理を行う業務も含まれます。
特定賃貸借契約の定義も同じ2条にあります。賃貸住宅の賃貸借契約であって、賃借人が当該賃貸住宅を第三者に転貸する事業を営むことを目的として締結されるものです。ただし、賃借人が人的関係・資本関係などで賃貸人と密接な関係を有する者である場合は除かれます。
- 管理業務は維持保全と金銭管理の2つ。金銭管理は維持保全と併せて行うものに限る
- 維持保全は、点検・清掃その他の維持と必要な修繕。媒介・取次ぎ・代理も含む
- 特定賃貸借契約は、転貸事業を営む目的で結ばれる賃貸借契約
- 賃貸人と密接な関係を有する者が賃借人の場合、特定賃貸借契約から除かれる
04登録:200戸・5年・30日という数字の根拠
賃貸住宅管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受けなければなりません。ただし、事業の規模が国土交通省令で定める規模未満であるときは登録が不要です。この規模が、施行規則3条の定める200戸です。法律の本体には200という数字がなく、省令にある点は押さえておいてください。
登録は5年ごとに更新を受けなければ、期間の経過によって効力を失います。更新の申請があった場合に、有効期間の満了の日までに処分がされないときは、従前の登録が処分がされるまでの間はなお効力を有します。この「みなし継続」の仕組みも条文にあります。
登録事項に変更があったときは、その日から30日以内に国土交通大臣に届け出なければなりません。廃業等の届出も同じ30日以内です。ただし届出の性質は違います。廃業等の届出をしなかった場合は20万円以下の過料ですが、変更の届出をしなかった場合は30万円以下の罰金です。過料と罰金の違いまで含めて覚えると、選択肢で迷いません。
| 項目 | 数値 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 登録が必要になる規模 | 200戸 | 管理する賃貸住宅の戸数が200戸未満なら登録は不要 | 法3条1項ただし書・施行規則3条 |
| 登録の更新 | 5年ごと | 更新を受けなければ期間の経過によって効力を失う | 法3条2項 |
| 登録事項の変更の届出 | 30日以内 | 変更があった日から。違反は30万円以下の罰金 | 法7条1項・法44条1号 |
| 廃業等の届出 | 30日以内 | 該当することとなった日から。違反は20万円以下の過料 | 法9条1項・法46条 |
| 登録取消しから再登録まで | 5年 | 取消しの日から5年を経過しない者は登録を拒否される | 法6条1項3号 |
| 業務停止命令の期間 | 1年以内 | 登録の取消しに代えて命じられる | 法23条1項 |
| 登録の取消し(休眠) | 1年 | 登録から1年以内に業務を開始せず、または1年以上業務を行っていないとき | 法23条2項 |
05登録の拒否事由は11号ある。類型でまとめる
6条1項の登録の拒否事由は11号あります。一つずつ暗記すると量に負けるので、性質で束ねてください。おおよそ「本人の資質に関するもの」「過去の処分・前科に関するもの」「反社会的勢力に関するもの」「法人・法定代理人を通じたもの」「事業を営む能力に関するもの」の5つに分かれます。
特に問われやすいのが、5年という期間が繰り返し出てくることです。登録を取り消されてから5年、拘禁刑以上の刑またはこの法律による罰金の刑の執行を終えてから5年、暴力団員でなくなった日から5年。数字が同じなので、起算点の違いだけを覚えれば足ります。
見落としやすいのが11号です。営業所または事務所ごとに業務管理者を確実に選任すると認められない者は、登録を拒否されます。業務管理者は12条の話だと思っていると、登録の場面で出てきたときに戸惑います。登録と業務管理者は入口でつながっていると理解してください。
なお、申請書やその添付書類に重要な事項について虚偽の記載があるとき、または重要な事実の記載が欠けているときも、登録は拒否されます。これは1項各号とは別に条文本文に書かれています。
| 類型 | 該当する号 | 内容 |
|---|---|---|
| 本人の資質 | 1号・2号 | 心身の故障により業務を的確に遂行できない者、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 |
| 過去の処分・前科 | 3号・4号 | 登録を取り消されてから5年を経過しない者、拘禁刑以上またはこの法律による罰金の執行を終えてから5年を経過しない者 |
| 反社会的勢力 | 5号・9号 | 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者、暴力団員等が事業活動を支配する者 |
| 不正・不誠実のおそれ | 6号 | 賃貸住宅管理業に関し不正または不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者 |
| 他人を通じた該当 | 7号・8号 | 法定代理人が1号から6号に該当する未成年者、役員に1号から6号に該当する者がある法人 |
| 事業を営む能力 | 10号・11号 | 必要な財産的基礎を有しない者、業務管理者を確実に選任すると認められない者 |
06業務管理者は、選任単位と効果をセットで覚える
賃貸住宅管理業者は、その営業所または事務所ごとに1人以上の業務管理者を選任しなければなりません。選任する目的は、その営業所における業務に関し、管理受託契約の内容の明確性や維持保全の実施方法の妥当性などについて管理・監督に関する事務を行わせることです。
覚えるべき効果は2つあります。1つ目は、業務管理者として選任した者の全てが欠格事由に該当するか、選任した者の全てが欠けるに至ったときは、新たに選任するまでの間、その営業所または事務所において管理受託契約を締結してはならないことです。営業所全体が止まるのではなく、管理受託契約の締結が止まる、という限定に注意してください。
2つ目は兼任の禁止です。業務管理者は、他の営業所または事務所の業務管理者となることができません。1人が2つの営業所を兼ねる形は認められません。
要件は施行規則14条にあります。管理業務に関し2年以上の実務の経験を有する者、または国土交通大臣がこれと同等以上の能力を有すると認めた者であって、かつ次のいずれかに該当することです。1つは登録証明事業による証明を受けている者、もう1つは宅地建物取引士で国土交通大臣が指定する管理業務に関する実務についての講習を修了した者です。つまり業務管理者になるルートは2つあり、賃貸不動産経営管理士試験はその一方の入口にあたります。
- 営業所または事務所ごとに1人以上(法12条1項)
- 全員が欠けたら、新たに選任するまで管理受託契約を締結できない(法12条2項)
- 他の営業所の業務管理者を兼ねることはできない(法12条3項)
- 要件は2年以上の実務経験+登録証明事業の証明、または宅地建物取引士+指定講習の修了(施行規則14条)
0713条と14条:締結前書面と締結時書面は時系列で分ける
管理受託契約でも特定賃貸借契約でも、締結前の書面(重要事項説明)は契約を締結するまでに交付して説明し、締結時の書面は契約を締結したときに遅滞なく交付します。この順番を固定すると、「契約後に重要事項を説明した」といった選択肢を即座に判断できます。
説明の相手方も分けて覚えます。管理受託契約の締結前書面は、管理業務を委託しようとする賃貸住宅の賃貸人に対して交付・説明します。ただし、賃貸住宅管理業者である者など、専門的知識および経験を有すると認められる者として国土交通省令で定めるものは除かれます。特定賃貸借契約の締結前書面は、特定賃貸借契約の相手方となろうとする者に対して行います。
違反したときの扱いも違います。管理受託契約の締結時書面(14条)を交付しなかった場合は30万円以下の罰金、特定賃貸借契約の締結前書面(30条)または締結時書面(31条)を交付しなかった場合は50万円以下の罰金です。金額の差は、サブリース被害の防止という立法の重点を反映しています。
なお、いずれの書面も相手方の承諾を得れば電磁的方法により提供でき、その場合は書面を交付したものとみなされます。承諾を得ることが前提である点を落とさないでください。
| 書面 | 時期 | 相手方 | 根拠 | 違反した場合 |
|---|---|---|---|---|
| 管理受託契約の締結前書面 | 契約を締結するまで | 管理業務を委託しようとする賃貸人 | 法13条1項 | 罰則の規定なし(監督処分の対象) |
| 管理受託契約の締結時書面 | 契約を締結したとき、遅滞なく | 委託者である賃貸人 | 法14条1項 | 30万円以下の罰金(法44条4号) |
| 特定賃貸借契約の締結前書面 | 契約を締結するまで | 特定賃貸借契約の相手方となろうとする者 | 法30条1項 | 50万円以下の罰金(法43条) |
| 特定賃貸借契約の締結時書面 | 契約を締結したとき、遅滞なく | 特定賃貸借契約の相手方 | 法31条1項 | 50万円以下の罰金(法43条) |
08説明事項の中身は、数を覚えず「柱」で覚える
締結前書面の記載事項は、管理受託契約が施行規則31条で11項目、特定賃貸借契約が施行規則45条で14項目あります。項目名をすべて暗記するのは効率が悪いので、柱でまとめてください。
管理受託契約の11項目は、おおよそ「誰が」「何を対象に」「どんな業務を」「いくらで」「どう報告するか」「いつまでか」「どう終わるか」という順に並んでいます。特に落としやすいのが、賃貸住宅管理業者の登録年月日および登録番号と、賃貸住宅の入居者に対する管理業務の内容および実施方法の周知に関する事項です。後述する立入検査でも、この2つの記載不備が指摘されています。
特定賃貸借契約の14項目には、管理受託契約にはない要素が加わります。相手方に支払う家賃の額・支払期日・支払方法等の賃貸の条件およびその変更に関する事項、損害賠償額の予定または違約金に関する事項、転借人の資格その他の転貸の条件、契約が終了した場合における特定転貸事業者の権利義務の承継、そして借地借家法その他の法令に関する事項の概要です。
最後の項目は特に意味があります。特定賃貸借契約は建物賃貸借なので、借地借家法が適用されます。事業者からの解約や更新拒絶には正当事由が必要になるという事実を、賃貸人となろうとする者に説明させる趣旨です。ここを理解しておくと、家賃減額のリスクをめぐる論点がつながります。
| 柱 | 管理受託契約(施行規則31条・11項目) | 特定賃貸借契約(施行規則45条・14項目) |
|---|---|---|
| 当事者 | 管理業者の商号・名称・氏名、登録年月日および登録番号 | 特定転貸事業者の商号・名称・氏名および住所 |
| 対象 | 管理業務の対象となる賃貸住宅 | 特定賃貸借契約の対象となる賃貸住宅 |
| 業務の中身 | 管理業務の内容および実施方法、一部の再委託に関する事項 | 特定転貸事業者が行う維持保全の実施方法 |
| お金 | 報酬の額・支払時期・方法、報酬に含まれない費用 | 相手方に支払う家賃の額・支払期日・支払方法等とその変更、維持保全に要する費用の分担 |
| 報告 | 法20条による委託者への報告に関する事項 | 相手方に対する維持保全の実施状況の報告に関する事項 |
| 責任 | 責任および免責に関する事項 | 損害賠償額の予定または違約金、責任および免責に関する事項 |
| 期間と終了 | 契約期間、更新および解除に関する事項 | 契約期間、更新および解除、終了時の権利義務の承継 |
| 入居者・転借人 | 入居者に対する管理業務の内容・実施方法の周知 | 転借人の資格その他の転貸の条件、転借人に対する維持保全の実施方法の周知 |
| 法令 | ― | 借地借家法その他の特定賃貸借契約に係る法令に関する事項の概要 |
0916条・18条・20条:お金と記録に関する3つの義務
分別管理(16条)は、管理業務において受領する家賃・敷金・共益費その他の金銭を、自己の固有財産および他の管理受託契約に係る金銭と分別して管理する義務です。施行規則36条が方法を定めており、内容は2つあります。1つは、管理する金銭のための口座を自己の固有財産の口座と明確に区分すること。もう1つは、その金銭がいずれの管理受託契約に基づくものかを自己の帳簿により直ちに判別できる状態で管理することです。
つまり、口座を分けるだけでは足りません。帳簿で契約ごとに判別できることまで求められます。選択肢では「口座を分けていれば足りる」という形で誤りが作られます。
帳簿(18条)は、営業所または事務所ごとに備え付け、委託者ごとに管理受託契約について契約年月日その他の事項を記載して保存します。保存期間の起算点が重要で、施行規則38条3項は、帳簿を各事業年度の末日をもって閉鎖し、閉鎖後5年間保存すると定めています。契約終了から5年ではありません。
定期報告(20条)は、施行規則40条が具体化しています。管理受託契約を締結した日から1年を超えない期間ごとに、および管理受託契約の期間の満了後遅滞なく、管理業務報告書を作成して委託者に交付し、説明します。記載事項は3つで、報告の対象となる期間、管理業務の実施状況、入居者からの苦情の発生状況および対応状況です。苦情がなくても報告を省略できない点は、後述する立入検査でも指摘されています。
| 義務 | 条文 | 求められる内容 | 落としやすい点 |
|---|---|---|---|
| 分別管理 | 法16条・施行規則36条 | 口座を明確に区分し、かつ帳簿で契約ごとに直ちに判別できる状態にする | 口座の区分だけでは足りない |
| 帳簿の備付け | 法18条・施行規則38条 | 営業所ごとに備え付け、委託者ごとに記載。各事業年度末日に閉鎖し、閉鎖後5年間保存 | 起算点は契約の終了ではなく事業年度の末日 |
| 定期報告 | 法20条・施行規則40条 | 締結日から1年を超えない期間ごと、および契約期間の満了後遅滞なく、報告書を交付して説明 | 苦情がなくても報告を省略できない |
10見落とされがちな義務が5つある
登録・書面・お金の3系統に目が向きやすいのですが、その周辺に短い条文がいくつも置かれています。条文が短いぶん、選択肢では細部を変えて問われます。
特に15条は誤解が多い条文です。再委託が禁止されるのは管理業務の全部であって、一部の再委託は禁止されていません。むしろ締結前書面の記載事項に「管理業務の一部の再委託に関する事項」が挙がっており、一部の再委託は制度上想定されています。「再委託は一切禁止」という選択肢は誤りです。
21条の秘密を守る義務は、賃貸住宅管理業者だけでなく、その使用人その他の従業者にも及びます。しかも、賃貸住宅管理業を営まなくなった後、従業者でなくなった後も義務は続きます。時間的な広がりが問われます。
- 10条 業務処理の原則:信義を旨とし、誠実にその業務を行う
- 11条 名義貸しの禁止:自己の名義をもって他人に賃貸住宅管理業を営ませてはならない
- 15条 再委託の禁止:禁止されるのは管理業務の全部。一部の再委託は禁止されていない
- 17条 証明書の携帯等:従業者に証明書を携帯させなければ業務に従事させてはならない
- 19条 標識の掲示:営業所または事務所ごとに公衆の見やすい場所に掲げる
- 21条 秘密を守る義務:業者本人と従業者に及び、辞めた後も続く
11サブリース規制は、登録の有無を問わずに働く
28条以下の規制で最初に押さえるのは、適用の入口です。登録制度が200戸という規模で線を引くのに対し、サブリース規制は規模も登録の有無も問いません。特定賃貸借契約を結ぶ事業者であれば、登録していなくても規制を受けます。
もう一つの入口が「勧誘者」です。28条は、特定転貸事業者が特定賃貸借契約の締結についての勧誘を行わせる者を勧誘者と定義し、特定転貸事業者と勧誘者を合わせて特定転貸事業者等と呼びます。誇大広告等の禁止と不当な勧誘等の禁止は、勧誘者にも及びます。
ただし、すべての規制が勧誘者に及ぶわけではありません。30条の締結前書面、31条の締結時書面、32条の書類の閲覧は、特定転貸事業者の義務です。監督処分についても、指示や業務停止の対象範囲は条文ごとに違います。誰に及ぶかを条文単位で確認してください。
なお35条は、何人も、特定賃貸借契約の適正化を図るため必要な措置をとるべきことを国土交通大臣に申し出ることができると定めています。申出ができるのが契約当事者に限られない点は、問われることがあります。
12誇大広告等の禁止と不当な勧誘等の禁止を切り分ける
28条と29条は場面が違います。28条は広告という表示の場面、29条は勧誘や解除の妨害という対人の場面です。まずこの区別を固定してください。
28条が対象とする事項は施行規則42条が4つ挙げています。相手方に支払う家賃の額・支払期日・支払方法等の賃貸の条件およびその変更に関する事項、維持保全の実施方法、維持保全に要する費用の分担に関する事項、そして契約の解除に関する事項です。禁止されるのは、著しく事実に相違する表示と、実際のものよりも著しく優良または有利であると人を誤認させる表示です。
29条は2つに分かれます。1号は、締結の勧誘に際し、または解除を妨げるため、判断に影響を及ぼす重要な事項について故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為です。2号は省令に委ねられ、施行規則43条が4つの行為を挙げています。威迫する行為、迷惑を覚えさせるような時間の電話または訪問による勧誘、深夜や長時間の勧誘その他私生活または業務の平穏を害する方法で困惑させる行為、そして契約をしない旨の意思を表示した者に対する執ような勧誘です。
罰則の重さも違います。29条1号の故意の不告知・不実告知は、6月以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、またはその併科です。28条違反は30万円以下の罰金です。故意が要件になっている1号のほうが重い扱いになっています。
| 観点 | 誇大広告等の禁止(28条) | 不当な勧誘等の禁止(29条) |
|---|---|---|
| 場面 | 特定賃貸借契約の条件について広告をするとき | 締結の勧誘に際して、または解除を妨げるため |
| 規制の対象者 | 特定転貸事業者および勧誘者 | 特定転貸事業者および勧誘者 |
| 禁止される内容 | 著しく事実に相違する表示、著しく優良・有利と誤認させる表示 | 1号:判断に影響する重要事項の故意の不告知・不実告知/2号:省令が定める4行為 |
| 対象事項・行為 | 家賃等の賃貸の条件と変更、維持保全の実施方法、費用の分担、契約の解除(施行規則42条) | 威迫、迷惑な時間の電話・訪問、深夜や長時間の勧誘、執ような勧誘(施行規則43条) |
| 罰則 | 30万円以下の罰金(法44条10号) | 1号違反は6月以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、または併科(法42条2号) |
1332条の書類の閲覧は、期間が2つ出てくる
特定転貸事業者は、業務および財産の状況を記載した書類を、特定賃貸借契約に関する業務を行う営業所または事務所に備え置き、相手方または相手方となろうとする者の求めに応じて閲覧させなければなりません。
書類の中身は施行規則48条が定めており、業務状況調書、貸借対照表および損益計算書またはこれらに代わる書面です。ここで期間が2つ出てきます。作成は事業年度ごとに、当該事業年度経過後3月以内。備置きは、営業所または事務所に備え置かれた日から起算して3年を経過する日までです。
3月と3年という似た数字が同じ条文に並ぶため、混ざりやすいところです。作成期限が3月、備置期間が3年、と対で覚えてください。賃貸住宅管理業者の帳簿が閉鎖後5年間であることと並べると、さらに区別がつきます。
閲覧させる相手は、特定賃貸借契約の相手方だけでなく、相手方となろうとする者を含みます。これから契約を検討している賃貸人が、事業者の財務状況を確認できるようにする趣旨です。
| 対象 | 誰の義務か | 作成・閉鎖の時点 | 期間 |
|---|---|---|---|
| 帳簿(法18条) | 賃貸住宅管理業者 | 各事業年度の末日をもって閉鎖 | 閉鎖後5年間保存 |
| 業務状況調書等(法32条) | 特定転貸事業者 | 事業年度経過後3月以内に作成 | 備え置かれた日から3年間 |
14監督処分と罰則は、二層それぞれで別に用意されている
監督の仕組みも二層構造です。登録制度の側には業務改善命令(22条)と登録の取消し等(23条)があり、サブリース規制の側には指示(33条)と業務の停止等(34条)があります。処分権者はいずれも国土交通大臣です。
違いは公表の扱いです。33条の指示と34条の命令は、いずれも国土交通大臣が公表しなければならないと条文に書かれています。一方、23条の処分については25条が官報による公告を定めています。公表と公告という言葉の違いに注意してください。
罰則は41条から46条に並びます。最も重いのが41条で、無登録営業、不正の手段による登録、名義貸しについて1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科です。次が42条で、業務停止命令違反、29条1号の故意の不告知・不実告知、34条の命令違反について6月以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、またはその併科です。
43条は50万円以下の罰金で、30条・31条の書面に関する違反が対象です。44条は30万円以下の罰金で、変更の届出、業務管理者の選任、14条の書面、証明書、標識、帳簿、秘密保持、誇大広告、書類の閲覧など幅広い違反が入ります。46条だけが過料で、廃業等の届出違反について20万円以下です。
| 条文 | 内容 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 41条 | 1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、または併科 | 無登録営業、不正の手段による登録、名義貸し |
| 42条 | 6月以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、または併科 | 業務停止命令違反、29条1号の故意の不告知・不実告知、34条の命令違反 |
| 43条 | 50万円以下の罰金 | 特定賃貸借契約の締結前書面・締結時書面に関する違反 |
| 44条 | 30万円以下の罰金 | 変更の届出、業務管理者の選任、14条書面、証明書、標識、帳簿、秘密保持、誇大広告、書類の閲覧、指示違反など |
| 46条 | 20万円以下の過料 | 廃業等の届出をせず、または虚偽の届出をしたとき |
15国土交通省の立入検査結果が、弱点の地図になる
この法律のどこが実務で外されているかは、国土交通省が公表しています。各地方整備局等が毎年度行っている全国立入検査の結果です。令和7年度は全国168社に立入検査を行い、法令違反の認められた118社に是正指導を行いました。同省の資料によれば、令和7年度末時点の賃貸住宅管理業者の登録数は10,197社です。
この指導件数の内訳が、そのまま学習の重点になります。出題実績ではありませんが、事業者が実際に取り違えている条文の分布なので、試験でも同じ場所が狙われやすいと考えられます。件数の多い順に、14条の締結時書面、13条の締結前書面、18条の帳簿、32条の書類の閲覧、17条の証明書と続きます。
指導の中身まで見ると、覚えるべき細部が具体的に分かります。たとえば14条では、法20条の規定による委託者への報告に関する事項、入居者に対する管理業務の実施方法の周知に関する事項、そして登録年月日および登録番号の記載不備が挙がっています。13条でも登録年月日および登録番号と、入居者への周知に関する事項が指摘されています。書面の記載事項のうち、この2つは繰り返し落とされているということです。
20条の定期報告では、報告事項が無い賃貸人に対する報告の省略が指摘されています。苦情や修繕がなくても報告を省略できないことは、条文と省令から導ける結論ですが、実務では省略されていた。こうした「原則に戻れば分かるのに実務では外れる」箇所は、試験でも問われます。
| 条文 | 内容 | 件数 |
|---|---|---|
| 法14条 | 管理受託契約の締結時の書面の交付義務違反 | 62件(60件) |
| 法13条 | 管理受託契約の締結前の書面の交付(重要事項説明)義務違反 | 43件(35件) |
| 法18条 | 帳簿の備付け等義務違反 | 32件(41件) |
| 法32条 | 特定転貸事業者の書類の閲覧義務違反 | 23件(26件) |
| 法17条 | 従業者証明書の携帯等義務違反 | 22件(42件) |
| 法20条 | 委託者への定期報告義務違反 | 17件(20件) |
| 法19条 | 標識の掲示義務違反 | 15件(22件) |
| 法31条 | 特定賃貸借契約の締結時の書面の交付義務違反 | 14件(19件) |
| 法16条 | 財産の分別管理義務違反 | 7件(7件) |
| 法28条 | 誇大広告等の禁止義務違反 | 4件(6件) |
| 法30条 | 特定賃貸借契約の締結前の書面の交付義務違反 | 4件(13件) |
16学習の順序と、一次資料のどこを読むか
順序は条文の並びに従ってください。定義(2条)、登録(3条〜9条)、業務の義務(10条〜21条)、監督(22条〜27条)、サブリース規制(28条〜36条)、罰則(41条〜46条)という順です。この順に一巡してから、似た制度どうしを横に並べる作業に入ります。
横に並べる対象は3組です。管理受託契約の締結前書面と特定賃貸借契約の締結前書面、賃貸住宅管理業者の帳簿と特定転貸事業者の業務状況調書等、そして登録制度側の監督処分とサブリース規制側の監督処分。この3組を表にすると、細部を問う選択肢に対応できます。
一次資料は全文を読む必要はありません。法律の本体は e-Gov 法令検索で条文だけを確認できます。数値の多くは施行規則にあるので、200戸なら3条、業務管理者の要件なら14条、分別管理の方法なら36条、帳簿の保存なら38条、定期報告なら40条、誇大広告の対象事項なら42条、不当な勧誘の行為類型なら43条、締結前説明事項なら31条と45条、書類の閲覧なら48条、というように条番号で当たってください。
解釈が問題になる部分は、国土交通省の賃貸住宅管理業法ポータルサイトに資料がまとまっています。法律の解釈・運用の考え方、サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン、重要事項説明書の記載例、標準管理受託契約書と特定賃貸借標準契約書。迷った論点の確認先として使えます。
17覚えたら、その日のうちに問いの形で確かめる
この分野は、読んで理解した気になりやすい構造をしています。条文が整理されているぶん、読むと分かった感じがするからです。しかし本番で問われるのは、条件を少し変えた選択肢の正誤です。読んだ直後に問いの形で確かめてください。
確認の仕方は単純です。制度ごとに「誰が・誰に・いつ・何を・違反するとどうなるか」を口に出して言えるかを試します。5つのうち1つでも詰まったら、その制度はまだ使える状態になっていません。
このサイトには賃貸住宅管理業法の○×一問一答が120問あり、暗記表は28項目です。論点ごとに要点整理も用意しているので、問題で詰まったらその論点へ戻り、戻ったらもう一度同じ問題を解いてください。この往復が、条文の細部を判断できる状態を作ります。
よくある質問
賃貸住宅管理業の登録は何戸から必要ですか?
管理する賃貸住宅の戸数が200戸以上の場合に必要です。法3条1項ただし書が国土交通省令に委ね、施行規則3条が200戸と定めています。200戸未満でも登録を受けることはでき、登録した以上は業務に関する義務がすべて及びます。なおサブリース規制は、登録の有無や規模を問わず適用されます。
管理受託契約の重要事項説明と、特定賃貸借契約の重要事項説明はどう違いますか?
説明する相手方と記載事項が違います。管理受託契約は管理業務を委託しようとする賃貸人に対して施行規則31条の11項目を、特定賃貸借契約は契約の相手方となろうとする者に対して施行規則45条の14項目を説明します。後者には家賃の額と変更に関する事項、損害賠償額の予定、借地借家法その他の法令に関する事項の概要などが加わります。罰則も、後者を怠った場合は50万円以下の罰金です。
帳簿は何年保存しますか?
各事業年度の末日をもって閉鎖し、閉鎖後5年間保存します(施行規則38条3項)。契約の終了から5年ではありません。混同しやすいのが特定転貸事業者の業務状況調書等で、こちらは事業年度経過後3月以内に作成し、営業所に備え置かれた日から3年間備え置きます(施行規則48条)。5年と3年を対で覚えてください。
管理業務の再委託は禁止されていますか?
禁止されているのは管理業務の全部の再委託です(法15条)。一部の再委託は禁止されていません。締結前書面の記載事項に「管理業務の一部の再委託に関する事項」が挙がっていることからも、一部の再委託が制度上想定されていることが分かります。「再委託は一切できない」という選択肢は誤りです。
サブリース規制は勧誘者にも及びますか?
誇大広告等の禁止(28条)と不当な勧誘等の禁止(29条)は、特定転貸事業者だけでなく勧誘者にも及びます。勧誘者とは、特定転貸事業者が特定賃貸借契約の締結についての勧誘を行わせる者です。一方、締結前書面(30条)、締結時書面(31条)、書類の閲覧(32条)は特定転貸事業者の義務です。誰に及ぶかは条文ごとに確認してください。
条文は直接読んだほうがいいですか?
全文を通読する必要はありませんが、数値と要件は条文で確認したほうが記憶が安定します。特に数値は施行規則にあることが多く、200戸は3条、業務管理者の要件は14条、分別管理の方法は36条、帳簿は38条、定期報告は40条にあります。e-Gov法令検索で該当条文だけを開く使い方で十分です。解釈が問題になる部分は、国土交通省の賃貸住宅管理業法ポータルサイトの資料で確認できます。
試験形式・日程の参照元
試験日程や申込み方法は変更される場合があります。受験前には必ず実施機関の最新案内を確認してください。